AIで既存のゲームに似た作品を作っても、遊びのアイデアが共通するだけで、直ちに著作権侵害になるわけではありません。問題になり得るのは、元の作品をもとに、キャラクターや画面演出、音楽、コードなどの創作的な表現まで似せた場合です。
たとえば、同じものを落として合体させるパズル。AIに「このゲームの画面を再現して」と頼むのと、「鉱石を落として、同じ種類が触れたら大きな結晶にして」と頼むのでは、渡している情報が違います。日本でゲームを作って公開するとき、この違いがどこに効くのかを見てみましょう。
AIには、残したい遊びを自分の言葉で渡す
遊びの仕組みを参考にするなら、まず何をすると面白いのかを、元の画面から切り離して書くところから始めます。落とす位置を少しずらすと、積み上がった鉱石が動いて次の合体が起きる。その面白さなら、元のキャラクターや効果音を知らなくても仕様にできます。鉱石が合わさると割れ目が青く光り、金属を打つような短い音が響く。動きや音まで自分の題材から考えると、遊びの手触りも変わります。
遊びのルールと新しい題材を渡す指示
同じ鉱石が触れたら合体。作業台の受け皿に落とす。
既存作品の画面を再現する指示
このスクリーンショットを読み込んで、配置と演出はそのまま、色だけ変えて。
後者では、生成後に色が変わっていても、特徴的な配置や図柄の組み合わせが残ることがあります。日本の著作権では、創作的な表現が共通するかを「類似性」、元の作品をもとに作ったかを「依拠性」と呼びます。どちらも認められ、権利者の許諾や適用できる例外がなければ、AIを使った制作でも侵害になり得ます。
画像をAIへ渡す段階でも、素材を複製して入力する許諾や、例外規定が使えるかを確かめます。文化庁は、他人の作品に似た表現を生成する目的で入力すると、著作権法の例外が適用されない場合があると整理しています。完成品をネットに出せるかは、さらに別の確認です。元の作品を知らずに生成した場合も、学習に使われた事実や出力の似方などから、依拠性が推認されることがあります。
出典:文化庁「AIと著作権に関する考え方について」概要・生成と利用(2024年3月の考え方を解説) / 文化庁「AIと著作権に関するチェックリスト&ガイダンス」(2024年7月31日公表) / 経済産業省「コンテンツ制作のための生成AI利活用ガイドブック」(2024年公表)。2026年11月4日確認
釣りゲームの裁判では、魚影の描き方まで比べた
GREEの「釣り★スタ」と、モバゲータウンで配信された「釣りゲータウン2」は、魚を引き寄せる画面などの類似が裁判になりました。一審では引き寄せ画面について侵害を認めましたが、2012年の知財高裁は結論を変えています。
両方に円や魚影があり、釣り場を選んで魚を引き寄せ、結果を見る流れも共通していました。高裁が比べたのは、画面の輪郭、円の大きさや位置、メーターや魚影の描き方まで含む具体的な表現です。この事件では、共通部分がアイデアや創作性のない部分にとどまり、著作権侵害を認めませんでした。
AIで作ったゲームを見直すときも、似ている箇所が、遊ぶために自然に生まれる共通点なのか、作品らしさを作る表現なのかを分けると、作り直す場所が見えてきます。
出典:知的財産高等裁判所「平成24年(ネ)第10027号」判決要旨(2012年8月8日判決)。2026年11月4日確認
公開前は、画面・素材・名前を別々に確かめる
試作品を見直すときは、一枚の画面だけでなく、操作してから結果が出るまでを通して比べると、静止画では気づきにくい演出や音の似方まで確認できます。広告を載せたり販売したりするなら、素材と公開先の条件も先に読んでおきましょう。
| 確かめるもの | 公開前に見る箇所 |
|---|---|
| 画面と演出 | 主要な画面、キャラクターの形、動きと効果音 |
| 画像・音楽・コード | 入手元と、改変・配布・商用利用の条件 |
| タイトルとロゴ | 同じ名前、似た読み方、公式作品に見える表示 |
| ゲームの実装 | 特徴的な機能に関係する特許 |
遊びのルールと、それを動かす技術は分けて考えます。たとえば、遊び方が同じかだけでは特許を判断できません。有効な特許で保護される技術の範囲に、自分のゲームの実装が入るかを確かめます。登録商標と名前やロゴが似ている場合は、対象の商品・サービスも確認します。よく知られた名前やロゴなどを使って、他社の公式作品や関連商品と誤認させる表示は、不正競争防止法の問題にもなり得ます。
名称や技術を調べる入口には、特許情報プラットフォーム「J-PlatPat」があります。似た登録が見つかったら、名称の文字だけで判断せず、商標の対象や特許で保護される範囲まで確かめます。
出典:e-Gov法令検索「特許法」(第2条・第68条・第70条) / INPIT知財総合支援窓口「商標制度の基礎」(商標登録の効果) / 経済産業省「不正競争防止法 逐条解説」第2条(2024年4月1日施行に対応)。2026年11月4日確認
AIで似たゲームを作るときのよくある疑問
無料で公開する場合も確認は必要?
必要です。無料でも、不特定の人が遊べるようネットへ公開すると、著作権法でいう公衆送信に当たり得ます。侵害に当たれば、配信を止めるよう求められたり、損害賠償を請求されたりすることがあります。自分だけで試作する段階と、ウェブで配る段階は分けて考えます。
AIツールが「商用利用可」なら、似た素材も使える?
サービスの利用規約で商用利用が許されていても、第三者の作品を使う許諾まで得たことにはなりません。既存作品に似た画像や音が出たら、採用する前に、どの表現が共通しているかを見直します。
出典:文化庁「AIと著作権に関する考え方について」概要・生成と利用(2024年3月の考え方を解説) / 経済産業省「コンテンツ制作のための生成AI利活用ガイドブック」(2024年公表) / 文化庁セミナー資料「AIと著作権Ⅱ」(2024年8月、39ページ)。2026年11月4日確認
アイキャッチは、本文の架空の鉱石パズルをもとに生成したドット絵です。
