店に置いたゲーム機が動かなくなった。調べてみると、中の受け箱が硬貨でいっぱいになっていた――。初期のビデオゲーム『PONG(ポン)』には、そんな故障の逸話が残っています。
遊ばれなかったのではなく、遊ばれて硬貨がたまった結果のトラブル。しかも、開発者の回想には操作つまみが消耗した話まで登場します。店で遊ばれた試作機に、何が起きていたのでしょうか。
バーに置かれた、画面とつまみのゲーム
1972年、アタリのアル・アルコーンが設計したPONGは、画面上のラケットで球を打ち返す対戦ゲームです。2人がそれぞれつまみを回し、縦に動くラケットで球を受けます。
試作機が置かれたのは、アメリカ・カリフォルニア州サニーベールのバー「Andy Capp’s」。Computer History Museumの展示解説には、この店から機械の故障を知らせる連絡が入り、アルコーンが調べに向かったと記されています。
この話で面白いのは、店で実際に遊ばれてから、不具合の理由が分かったこと。ゲームの画面だけを見ていても、次に起きる問題は見えません。
出典:Computer History Museum「Pong」。作品の年・設計者・設置場所・故障連絡を確認(確認日:2026年10月31日)。
原因は、満杯になった硬貨の受け箱
故障の原因について、アタリ共同創業者のテッド・ダブニーは2012年の聞き取りで、コイン箱がいっぱいになってコインの機構を詰まらせたと回想しています。博物館の展示解説でも、25セント硬貨の詰まりが故障の原因として紹介されていました。
お客さんが遊ぶために入れた硬貨は、機械の中へたまっていきます。その受け箱が満杯になり、硬貨を通す部分までふさいだ。遊ばれた証拠の硬貨が、次の遊びを止めてしまったわけです。
「壊れた」と聞くと、画面やゲームの動きに問題があったのかと思ってしまいます。この逸話に残っている原因は、もっと手触りのあるものでした。店に置くゲームには、硬貨をためておく場所も必要だったのです。
出典:Computer History Museum「Oral History of Samuel F. (Ted) Dabney」、15ページ(聞き取り:2012年7月16日)。あわせてComputer History Museum「Pong」。いずれも確認日:2026年10月31日。

つまみの部品も、短期間で消耗していた
硬貨の話とは別に、アルコーンは初期の操作部品にも問題があったと語っています。つまみの回転をゲームの操作へ伝える「可変抵抗」という部品が、1〜2週間ほどで故障したという回想です。
そこで、より耐久性のある部品へ変更したと説明しています。ラケットを上下させるたびに回されるつまみ。画面の中では単純な動きでも、その回数を受け止める部品には負担がかかっていたのでしょう。
満杯のコイン箱と、消耗する操作部品。二つの話を並べると、繰り返し遊ばれること自体が、試作機の課題をあぶり出したと読めます。これは資料を踏まえた見方ですが、人気が売上の数字だけでなく、機械の不調として現れるところに、この逸話の面白さがあります。
出典:Computer History Museum「Oral History of Allan (Al) Alcorn」、16ページ(聞き取り:2008年4月26日・5月23日、確認日:2026年10月31日)。操作部品の故障と交換は、開発者による後年の回想です。
PONGのコイン詰まりについて、よくある疑問
家庭用のゲーム機で起きた話ですか?
この逸話は、バーに置かれた硬貨式の試作機について伝えられています。家庭で遊ぶ製品の故障談とは区別して読む必要があります。
設置して何日で硬貨が詰まったのですか?
資料によって期間の表現に差があるため、この記事では日数の断定を避けました。硬貨の受け箱が満杯になり、コイン機構が詰まったという部分を、博物館の記録と当事者の回想で確かめています。
