本文へ移動
008
最終更新2026.11.06
ゲーム雑学の一覧へ

AIで似たゲームを作ったら?著作権の境目を実例で見る

銅の受け皿で青い鉱石が触れ合い大きな結晶になる架空のパズルを描いた生成ドット絵

AIで既存のゲームに似た作品を作っても、遊びのアイデアが共通するだけで、直ちに著作権侵害になるわけではありません。問題になり得るのは、元の作品をもとに、キャラクターや画面演出、音楽、コードなどの創作的な表現まで似せた場合です。

たとえば、同じものを落として合体させるパズル。AIに「このゲームの画面を再現して」と頼むのと、「鉱石を落として、同じ種類が触れたら大きな結晶にして」と頼むのでは、渡している情報が違います。日本でゲームを作って公開するとき、この違いがどこに効くのかを見てみましょう。

AIには、残したい遊びを自分の言葉で渡す

遊びの仕組みを参考にするなら、まず何をすると面白いのかを、元の画面から切り離して書くところから始めます。落とす位置を少しずらすと、積み上がった鉱石が動いて次の合体が起きる。その面白さなら、元のキャラクターや効果音を知らなくても仕様にできます。鉱石が合わさると割れ目が青く光り、金属を打つような短い音が響く。動きや音まで自分の題材から考えると、遊びの手触りも変わります。

遊びのルールと新しい題材を渡す指示

同じ鉱石が触れたら合体。作業台の受け皿に落とす。

既存作品の画面を再現する指示

このスクリーンショットを読み込んで、配置と演出はそのまま、色だけ変えて。

後者では、生成後に色が変わっていても、特徴的な配置や図柄の組み合わせが残ることがあります。日本の著作権では、創作的な表現が共通するかを「類似性」、元の作品をもとに作ったかを「依拠性」と呼びます。どちらも認められ、権利者の許諾や適用できる例外がなければ、AIを使った制作でも侵害になり得ます。

画像をAIへ渡す段階でも、素材を複製して入力する許諾や、例外規定が使えるかを確かめます。文化庁は、他人の作品に似た表現を生成する目的で入力すると、著作権法の例外が適用されない場合があると整理しています。完成品をネットに出せるかは、さらに別の確認です。元の作品を知らずに生成した場合も、学習に使われた事実や出力の似方などから、依拠性が推認されることがあります。

釣りゲームの裁判では、魚影の描き方まで比べた

GREEの「釣り★スタ」と、モバゲータウンで配信された「釣りゲータウン2」は、魚を引き寄せる画面などの類似が裁判になりました。一審では引き寄せ画面について侵害を認めましたが、2012年の知財高裁は結論を変えています。

両方に円や魚影があり、釣り場を選んで魚を引き寄せ、結果を見る流れも共通していました。高裁が比べたのは、画面の輪郭、円の大きさや位置、メーターや魚影の描き方まで含む具体的な表現です。この事件では、共通部分がアイデアや創作性のない部分にとどまり、著作権侵害を認めませんでした。

AIで作ったゲームを見直すときも、似ている箇所が、遊ぶために自然に生まれる共通点なのか、作品らしさを作る表現なのかを分けると、作り直す場所が見えてきます。

出典:知的財産高等裁判所「平成24年(ネ)第10027号」判決要旨(2012年8月8日判決)。2026年11月4日確認

公開前は、画面・素材・名前を別々に確かめる

試作品を見直すときは、一枚の画面だけでなく、操作してから結果が出るまでを通して比べると、静止画では気づきにくい演出や音の似方まで確認できます。広告を載せたり販売したりするなら、素材と公開先の条件も先に読んでおきましょう。

確かめるもの公開前に見る箇所
画面と演出主要な画面、キャラクターの形、動きと効果音
画像・音楽・コード入手元と、改変・配布・商用利用の条件
タイトルとロゴ同じ名前、似た読み方、公式作品に見える表示
ゲームの実装特徴的な機能に関係する特許

遊びのルールと、それを動かす技術は分けて考えます。たとえば、遊び方が同じかだけでは特許を判断できません。有効な特許で保護される技術の範囲に、自分のゲームの実装が入るかを確かめます。登録商標と名前やロゴが似ている場合は、対象の商品・サービスも確認します。よく知られた名前やロゴなどを使って、他社の公式作品や関連商品と誤認させる表示は、不正競争防止法の問題にもなり得ます。

名称や技術を調べる入口には、特許情報プラットフォーム「J-PlatPat」があります。似た登録が見つかったら、名称の文字だけで判断せず、商標の対象や特許で保護される範囲まで確かめます。

出典:e-Gov法令検索「特許法」(第2条・第68条・第70条) / INPIT知財総合支援窓口「商標制度の基礎」(商標登録の効果) / 経済産業省「不正競争防止法 逐条解説」第2条(2024年4月1日施行に対応)。2026年11月4日確認

AIで似たゲームを作るときのよくある疑問

無料で公開する場合も確認は必要?

必要です。無料でも、不特定の人が遊べるようネットへ公開すると、著作権法でいう公衆送信に当たり得ます。侵害に当たれば、配信を止めるよう求められたり、損害賠償を請求されたりすることがあります。自分だけで試作する段階と、ウェブで配る段階は分けて考えます。

AIツールが「商用利用可」なら、似た素材も使える?

サービスの利用規約で商用利用が許されていても、第三者の作品を使う許諾まで得たことにはなりません。既存作品に似た画像や音が出たら、採用する前に、どの表現が共通しているかを見直します。

アイキャッチは、本文の架空の鉱石パズルをもとに生成したドット絵です。